ニューカッスル・ダラム英語勉強会

イングランドのニューカッスル大学およびダラム大学に留学に来ている日本人達による英語学習の一篇。

倒置について

先ほどの記事と同じ箇所から。

Not only are they confronting a proliferation of new “channels” through which to pump their messages; they are also having to puzzle out how to craft them in an age of mass scepticism.

もしかしたら「アレ?なんでare theyになっているの?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。文法的には間違いでしょうか。実は、ここでは倒置法(inversion)が使われています。おそらく中学〜大学(少なくとも英語/ 外国語系の学部、学科などを省いて)では、あまり習わないのではないでしょうか。でも実際はこういった記事や小説なんかにも良く出てくる。ジェイン・オースティンやディケンズもよくやる手法ですね。今回は倒置について少しまとめてみます。


倒置を使うとどのような効果を表すのでしょうか。これには個人レベルでの差異もありますが、定説として言われているのが、第一に「フォーマル」な響きになる(Swan, 2005)、第二に「文語的な響き」になるということです(江川, 2009)。それでは倒置の構造と使用について見て行きましょう。

まず倒置とは「主語(S)と動詞(V)の通常の位置が逆になることを指す」とあり(江川, 2009: 413)、文の構造は:
V + S
もしくは
助動詞+ S + V
になります。

どのような時に使うのかというと:
①疑問文
②強調
③構文上の倒置
と、大まかに3つに分けることが可能です。ここでは②の強調のための倒置だけを見て行きます。

②の強調のための倒置はさらにいくつかのレベルに下位区分することが可能です。よく見かけるのは;
a. 否定または準否定の副詞語句
Not until I visited him did I realize how ill he was (江川, 2009).
(彼を見舞いに行くまで、彼の病気が重い事を知らなかった)
Under no circumstances can we cash cheques (Swan, 2005).
(どんな状況でも我々は小切手をきることができなかった)

b. 場所を表す副詞語句
Up went the hat-air balloon (江川, 2009).
(熱気球は上がっていった)

c. 程度の副詞等
Such was the force of the explosion that all the windows were broken to piece (江川、2009).
(すさまじい爆発で、窓がすべてこなごなに飛び散った)

d. 目的語
He promised never to give us trouble, but this promise he broke in less than a week.
(彼は絶対に迷惑をかけないと約束したが、その約束を一週間もしないうちに破った)


こんな感じでしょう。ここでThe Economistの記事に戻ってみます。倒置になっているのは次の強調箇所。

Not only are they confronting a proliferation of new “channels” through which to pump their messages; they are also having to puzzle out how to craft them in an age of mass scepticism.

つまりa.の否定または準否定の副詞語句の倒置ということになります。何を強調しているのかというと、後半箇所です。セミコロンの前の文は「あたり前」であるとし、後半箇所を強調するために少々長めの文を置いて、さらにそれを倒置させているのです。訳を考えてみると、「広告マンは商品の良さを振りまく新しい「媒体」が増えていることに直面しているだけではない。彼らがやらなくちゃいけないのは、疑い深くなった世代においてどのように広告を作り出すのかということで、たったこの瞬間も頭をひねらせているのである」という感じになります。(Yusuke)

参考文献
江川泰一郎. (2009). 『英文法解説 改訂三版』東京;金子書房.
Swan, M. (2005). Practical English Usage Third Edition. Oxford: Oxford University Press.